委員による厳正な審査の結果,2025年の優秀研究賞・学生研究賞はそれぞれ以下のように決定しました(2026年2月4日決定,2026年2月25日公表).なお,規程に基づき,優秀研究賞は共著者を含む全員,学生研究賞は筆頭著者である学生が表彰の対象となります.
受賞者
真鍋友則(筑波大)・黒木裕鷹(阪公立大)
タイトル
第三者委員会調査報告書のテキストマイニングによる負の企業文化の類型化
概要
本研究は,日本企業の不祥事に関する第三者委員会報告書を対象に,テキストマイニングを行った.まず,原因分析セクションを大規模言語モデルにより解析し,組織文化,組織構造,および経営層に関する記述を抽出した.これらを総合的に捉えることで,「企業文化」として概念的に位置付けた.次に,抽出データに対してトピックモデルを適用した結果,売上達成圧力,コンプライアンス軽視,品質保証・顧客の軽視,ガバナンス不全という四つの否定的文化パターンが反復的に出現することを確認した.さらに,これらの文化パターンと不祥事類型との関連を検討した結果,たとえば品質関連の不祥事は顧客軽視との結びつきが顕著であるなど,特徴的な対応関係が明らかとなった.本研究は,企業文化と不祥事発生の原因との対応を実証的に提示し,これまで十分に活用されてこなかったテキスト資料を分析対象として取り込むことで,理論的枠組みに対する新たな貢献を行う.加えて,導出された知見は,ガバナンス改革や不祥事防止に向けた実務的含意を提供するものである.
選奨理由
人手抽出した文書を LLM で分類し,トピックモデルで可視化することで企業文化を類型化しています.LLM による即時分類が分析の初動として機能しており,「データ準備をしてから分析する」従来の流れから,プロンプトのみで即時分析が可能になるという潮流の変化を強く感じさせるもので,企業文化の予兆をどう捉えるかという研究の深化も期待されます.この分野の研究に大きな貢献があり,優秀研究賞にふさわしいと判断しました.
受賞者
中本さや香(九工大)
タイトル
日本語小論文に対するLLMを用いた建設的フィードバックの生成と分析
概要
小論文教育は,学習者の論理的思考力や表現力を育成するために効果的である.効果的な小論文教育の形成には,学習者に対して即時的かつ高品質なフィードバックを行うことが重要である.本研究では,高品質なフィー ドバックとして学習者の理解を深めることを目的とした「建設的フィードバック」に着目する.建設的フィードバックを行うためには,小論文をよく読み,学習者の理解度を考慮して適切な支援度でフィードバックを行う必要がある.このようなフィードバックを行うことは指導者の多大な労力を必要とするうえ,それを即時的に行うことは難しい.そこで,本研究では,大規模言語モデル (LLM) を用いて建設的フィードバックを自動で生成することを目指す.近年の LLM は,非常に高度な言語生成能力を持ち,入力に指示を含めることでその指示に従った出力を行うことが可能である.本研究では,LLM の入力に建設的フィードバックの要素を知識として与え,これらの知識に従ってフィード バックを行うように指示する.実験の結果,小論文の内容のレベルが低いほど支援度の高いフィードバックが増えるなど,LLM 自身が学習者の能力に応じて支援度の調整を行える可能性が示された.今後の課題として,LLM の生成したフィードバックの教育効果の実証実験による効果性の検証が求められる.